
英国スコットランド北部、ハイランド地方の町ドーノックにある名門ロイヤル・ドーノック・ゴルフクラブが、3つ目の18ホールを造る計画を地元自治体のハイランド議会に持ち込んだ[1][2]。2026年9月4日に受理されたのは、開発の環境影響評価(EIA)で何を調べるべきかを自治体に確認する「スコーピング」の申請だ[2]。同クラブの看板コースは近年、予約の申し込みが受け入れ枠を大きく上回る状態が続いており、2022年はティータイムの予約受付を全面的に締め切った[1]。
ゴルフをする側から見ると、影響が及ぶのは予約とプレー料金だ。看板コースのビジター料金は2026年4〜10月の1ラウンド360ポンド(約7万5500円)で、2027年の同じ時期は390ポンド(約8万1800円)に上がる[4][5]。新コースの着工目安は2028年だ[1][12]。新コースができても看板コースそのものの予約枠が増えるわけではない、というのが筆者の見立てだ。
ビジネスの論点は、予約が取れないほど需要がある名門が、値上げだけでなく供給の拡大を選んだ点にある。本稿は公表されたラウンド数、クラブハウス投資、料金表、保護区に隣接する立地の手続きを並べ、この判断を読み解く。
※ポンドの円換算は、三菱UFJ銀行の2026年9月25日の公表仲値(TTM、1ポンド=209.80円。9月26日時点の最新の公表値)で計算した[11]。

ロイヤル・ドーノックの3つ目のコース計画とは何か
計画の中心は18ホールのリンクスの新設だ[1]。計画地全体は約171ヘクタール(約171万㎡、東京ドーム約37個分)で、この広さにはストルーイの改修、パー3コースの移設、練習場の整備まで含まれる[1][12]。リンクスは海沿いの砂地に造る英国の伝統的なコースを指す。用地は既存のパー3コースと練習場の西側にあり、ドーノック湾(ドーノック・ファース)のSSSI(特別科学関心地区)に隣接する[1]。
申請書が挙げる工事はコースの新設だけではない[1][2]。
- 18ホールのリンクスの新設
- 2番目のコース「ストルーイ」の改修
- 18ホールのパー3コースを東側へ移設し、4ホールのパー3コースを新設[1]
- 練習場、管理棟、付帯施設の整備
設計は米国のキング・コリンズ・ドーマー社が担う。同社の起用と、ストルーイに隣接する50エーカー(約20万㎡)の用地確保は2025年6月に公表されていた[6]。クラブは当時、この用地で将来3つのコースを提供できる余地が生まれたと説明している[6]。約171ヘクタールの計画地のうち、この50エーカー(約20ヘクタール)がどこにあたるかは、公表資料からは読み取れない。
今回の申請は、地元の計画コンサルタントであるネス・プランニングを代理人として出された[2]。ハイランド議会の一覧では、計画地はドーノックのメドウズ・パーク・ロード沿いの土地と記され、担当の選挙区はイースト・サザーランド・アンド・エダートンだ[2]。工期は約12か月の見込みだ[1][12]。

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なぜ新設するのか:既存2コースのラウンド数と予約超過
新設の理由として申請側が挙げるのは、看板コースの慢性的な予約超過だ[1]。申請書類はハイランド議会の計画申請の公開記録(案件番号26/03987/SCOP)で閲覧でき、英紙ザ・スコッツマンも報じている[10][12]。クラブの委託でコンサルティング会社テトラ・テックがまとめた申請書類によると、看板のチャンピオンシップコースでは年間約3万2000ラウンド、ストルーイでは約1万ラウンドがプレーされている[1][12]。
2つのコースを合わせると年約4万2000ラウンドで、その4分の3強を看板コースが占める。看板コースの3万2000ラウンドを365日で割ると1日平均約88ラウンドになる。冬場のプレーが少ないことを考えると、繁忙期の1日あたりはこれより多いと筆者は見ている。書類は2022年にティータイムの予約受付を全面的に締め切ったと記し、その後の年も早い段階から予約が入っていると説明する[1][12]。
需要の中身にも特徴がある。書類はビジターの「かなりの割合」が海外からの高額消費の観光客で、看板コースの評判とドーノックの土地柄に引かれて訪れていると書く[1][12]。国内の会員の利用を増やすための投資というより、海外から来るゴルフ観光客の受け皿を広げる計画と読める。これは筆者の見立てだ。
GMのニール・ハンプトン氏は、評価の高い設計者による環境配慮型のコースが加われば、ゴルフの目的地としての評判が高まり、ハイランドでの滞在延長につながると述べている[1]。
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名門の供給拡大はどんな投資判断か:クラブハウスと料金
クラブはコースより先に建物へ投資した。1390万ポンド(約29億1600万円)の新クラブハウスを2025年12月16日に開業し、レストランとバー、更衣室、プロショップ、トラックマン(弾道計測機器)のスタジオを備える[1][3]。2027年の創立150周年を前に、受け入れ設備を先に整えた形だ[3]。開業前日の2025年12月15日には、クラブが公式Xで会員向けの内覧を伝えている。
Royal Dornoch members have enjoyed their first look inside the spectacular new £13.9m clubhouse overlooking the Championship Course, a truly historic moment for the club.
Full story 👇https://t.co/cp42nZHGDz pic.twitter.com/JXlSAgOLtd
— Royal Dornoch (@RoyalDornochGC) December 15, 2025
料金は上がり続けている。公式サイトの料金表では、看板コースの4〜10月の1ラウンドは2026年の360ポンドから2027年は390ポンドへ、約8%上がる[4][5]。ストルーイは120ポンド(約2万5200円)から130ポンド(約2万7300円)で、上げ幅は同程度だ[4][5]。
| 1ラウンドの料金(4〜10月) | 2026年 | 2027年 |
|---|---|---|
| チャンピオンシップコース | 360ポンド(約7万5500円) | 390ポンド(約8万1800円) |
| ストルーイコース | 120ポンド(約2万5200円) | 130ポンド(約2万7300円) |

筆者の見立てでは、予約が埋まる名門の選択肢は値上げと枠の追加の2つだ。値上げは既存の枠の収入を増やせるが、断っている需要を取り込めない。3つ目のコースは、看板コースの評判を借りて、あふれた需要を別の18ホールで受け止める試みと読める。ただしクラブは新コースの事業費も料金も公表しておらず、投資の回収を数字で検証することはできない。
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環境保護区に隣接する計画はどんな手続きを経るのか
計画地に隣接するSSSIは、英国が生物の生息地や地形を守るために指定する国家的に重要な自然地区で、スコットランドには1422か所ある[7]。指定はスコットランドの自然保護機関ネイチャースコットが、2004年の自然保護法に基づいて行う[7]。
今回の申請は着工の許可ではない。スコットランドの制度では、スコーピングは自治体がEIA報告書で重点的に調べるべき項目を示す手続きで、計画許可とは別物だ[8]。自治体は原則として申請受理から35日以内に意見を出し、事業者はその意見に沿って報告書を作る[8]。
報道によると、申請書類は開発で生息地が恒久的に失われる可能性に触れている[1]。スコットランド環境保護庁(SEPA)は調査範囲の案に「おおむね異論はない」とする一方、計画地の一部が2本の小川(ブラック・バーンとドーノック・バーン)の氾濫の恐れがある区域にかかるとして、詳しい洪水リスク評価を求めた[1][13]。ハイランド議会はまだ判断を出していない[1]。
クラブと委託先のコンサルタントは、関係機関や地域住民、地権者と「相応の協議」を進めるとしている[1]。スコーピングの意見が出ても、その後にEIA報告書を添えた計画申請と審査が続く[8]。筆者は、着工目安の2028年をこの手続きが順調に進んだ場合の目安と読んでいる。

英国のゴルフ場が、存続の岐路に立っている。維持費の高騰と会員の減少が重なり、約433のクラブが閉鎖危機にあると指摘される[1]。問題はクラブが消えることだけではない。広大な土地の使い道をめぐり、社会的な綱引きが始まっている点にある。 対立[…]
日本でゴルフ場の新設は進んでいるのか
日本では、ゴルフ場の新設はほぼ止まっている。業界紙を発行する一季出版の調査では、2025年4月時点の営業中ゴルフ場は2110コースで、前年から11コース減った[9]。ピークは2004年の2356コースで、2008年以降18年連続で減っている[9]。
新しいコースを造る動きも見えない。同じ調査で、建設中の19か所と、認可済みで未着工の20か所の計画には、この1年間動きがなかった[9]。暫定的に閉鎖中のコースも全国で47ある[9]。
ロイヤル・ドーノックとの差は、需要の向きにある。ドーノックは既存コースの予約が埋まり、海外からの観光客が需要を支えているため、新設が選択肢になる[1]。日本はコース数そのものが減る局面にあり、一季出版は営業中ゴルフ場の縮小が続く見込みとしている[9]。
| 比較軸 | ロイヤル・ドーノック(英国スコットランド) | 日本のゴルフ場全体 |
|---|---|---|
| 需要の状況 | 看板コースは予約超過。2022年は予約受付を全面締め切り[1] | 営業中の数が18年連続で減少[9] |
| 新設の動き | 18ホールのリンクスを計画、2028年着工目安[1] | 建設中19か所・未着工20か所に動きなし[9] |
| 需要の担い手 | ビジターのかなりの割合が海外からの高額消費の観光客[1] | — |
| 環境面の手続き | 保護区に隣接し、EIAのスコーピングから開始[1][2] | — |
※「—」は本稿で確認していない項目。
まとめ
ロイヤル・ドーノックの計画は、予約が埋まる名門が値上げを続けながら、18ホールを1つ増やして需要を受け止めようとする動きだ。根拠はクラブ自身の書類にある年約3万2000ラウンドと、2022年の予約受付締め切りで、需要の多くを海外からの観光客が担っている。ゴルフをする読者にとっては、看板コースの枠が増えるわけではなく、着工目安の2028年と工期約12か月から見て、新コースを回れるのは早くても2029年以降になる点が見方を変える。ビジネス読者にとっては、保護区に隣接する立地では、需要があっても手続きと環境評価が事業の時間軸を決めることが判断材料になる。新コースの事業費と料金が公表された段階で、この投資の採算を改めて検証できる。
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よくある質問(FAQ)
Q. ロイヤル・ドーノックはどこにあるのか。
A. 英国スコットランド北部のハイランド地方にある町ドーノックのクラブで、現在はチャンピオンシップコースとストルーイコースを持つ[1][2]。
Q. 日本から行くとプレー料金はいくらか。
A. 看板のチャンピオンシップコースは、2026年4〜10月のビジター1ラウンドが360ポンド(約7万5500円)で、2027年は390ポンド(約8万1800円)になる[4][5]。
Q. 新しいコースはいつプレーできるのか。
A. 着工目安は2028年で工期は約12か月とされるが、現時点では環境影響評価の手続きが始まった段階で、開場時期は公表されていない[1][2]。
出典
- Royal Dornoch unveils plans for third links course amid “chronic oversubscription”, The Golf Business, 2026-09-25. https://thegolfbusiness.co.uk/2026/09/royal-dornoch-unveils-plans-for-third-links-course-amid-chronic-oversubscription/
- Valid Screening and Scoping Applications(26/03987/SCOP), The Highland Council, 2026-09-14. https://www.highland.gov.uk/downloads/file/7758/screening-and-scoping-opinion-15-september-2026
- A Clubhouse to Serve Generations to Come, Royal Dornoch Golf Club, 2025-12-16. https://royaldornoch.com/2025/12/16/a-clubhouse-to-serve-generations-to-come/
- Royal Dornoch Green Fees April 2026 – March 2027, Royal Dornoch Golf Club. https://royaldornoch.com/wp-content/uploads/2025/03/GREEN-FEES-26-27-1.pdf
- Royal Dornoch Green Fees April 2027 – March 2028, Royal Dornoch Golf Club. https://royaldornoch.com/wp-content/uploads/2026/07/GREEN-FEES-27-28.pdf
- Royal Dornoch announces £13.9m clubhouse and new course masterplan, Scottish Construction Now, 2025-06-04. https://www.scottishconstructionnow.com/articles/royal-dornoch-announces-ps139m-clubhouse-and-new-course-masterplan
- Sites of Special Scientific Interest, Scottish Government. https://www.gov.scot/policies/biodiversity/sites-of-special-scientific-interest/
- Planning Circular 1/2017: Environmental Impact Assessment regulations(Preparation and Content of an EIA Report), Scottish Government. https://www.gov.scot/publications/planning-circular-1-2017-environmental-impact-assessment-regulations-2017/pages/10/
- 全国営業中ゴルフ場数、昨年比11件減の2110コース, 一季出版, 2025-08-07. https://www.ikki-web2.com/archives/11148
- Exclusive: World-famous Scottish golf club details plans for new course amid ‘chronic oversubscription’, The Scotsman, 2026-09-25(The Golf Business[1]が引用した原典。ウェブアーカイブ: https://web.archive.org/web/20260926031657/https://www.scotsman.com/news/world-famous-scottish-golf-club-details-plans-for-new-course-9171125). https://www.scotsman.com/news/world-famous-scottish-golf-club-details-plans-for-new-course-9171125
- 外国為替相場(2026年9月25日), 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(三菱UFJ銀行の公表相場). https://www.murc-kawasesouba.jp/fx/past/index.php?id=260925
- Royal Dornoch Golf Club – Golf Facilities Masterplan: Environmental Impact Assessment Scoping Opinion Request(Tetra Tech, 2026-09-03提出版), ハイランド議会 計画申請 26/03987/SCOP. (書類一覧から閲覧) https://wam.highland.gov.uk/wam/applicationDetails.do?activeTab=documents&keyVal=TL5L3KIH0JS00
- Consultee comment: Scottish Environment Protection Agency(2026-09-21), ハイランド議会 計画申請 26/03987/SCOP. (書類一覧から閲覧) https://wam.highland.gov.uk/wam/applicationDetails.do?activeTab=documents&keyVal=TL5L3KIH0JS00

