
韓国で、宿を選ぶ基準が客室の設備から「近くで何ができるか」へ移っている。韓国観光公社(KTO)が携帯電話・クレジットカード・宿泊予約のデータを横断分析する「韓国観光データラボ」の集計では、宿泊予約に占めるゴルフ場テーマの宿の割合が過去3年で199.3%高まり、温泉やウォーターパークと結びついた宿も伸びた[1][2]。ゴルフ場や温泉といった周辺の活動が宿泊需要を動かす主な要因になっている、というのがKTOの見立てだ[1][2]。一方、韓国全国524カ所のゴルフ場の年間内場者数は2022年の5058万人をピークに、2025年は4641万人まで3年連続で減った[3]。コース全体の利用者が減る中でも、ゴルフ場は泊まりがけの旅行の目的地として選ばれるようになっている。ゴルフ市場をコースの利用者数だけで見ていると、この変化は見えにくい。本稿は2つのデータが何を示し、何を示していないかを整理し、日本の数字とも比べる。
韓国のオンコースゴルフ人口はなぜ減っているのか
全国524カ所のゴルフ場の年間内場者数は、2022年の5058万人から2023年4772万人、2024年4741万人、2025年4641万人と3年連続で減った[3]。2025年は前年比2.1%減で、ピークの2022年からは3年間で8.2%減った計算になる[3]。

背景には、需要が減る中でもゴルフ場がカート代・キャディー代を値上げしてきた料金構造がある[3]。需要減と価格上昇が同時に進む構造が固定化した、という評価も伝えられている[3]。利用者層では、ベビーブーム世代の引退に加え、コロナ禍に増えた20〜30代が急速に離れている[3]。韓国ゴルフ消費者院の院長は「若年層はスクリーンゴルフへ、中高年層はパークゴルフへ移る流れがはっきりしている」とみる[3]。日本や東南アジアでのゴルフ需要が増え、国内のゴルフ場の競争力が弱まったことも挙げられている[3]。運営側ではキャディー不足と人件費の上昇が重なり、大企業が社内のゴルフ場利用の規制を強めたことで、法人カードの売上に頼る構造も揺らいでいる[3]。オンコースの利用者減は、価格・世代交代・海外への流出・法人需要の縮小が重なった結果といえる。
宿が客室の設備ではなく、周辺で楽しめるゴルフや公演によって選ばれる動きを、スポーツを軸にした体験消費として整理したい読者に向く一冊。
ゴルフ場テーマの宿はどれだけ伸びているのか
KTOの分析では、国内全体の延べ宿泊数は過去3年で5.1%増にとどまった[1]。外国人の宿泊は29.0%増え、韓国人の1.9%増の約15倍の伸びだった[1]。ただし直近1年(2025年6月〜2026年5月)の延べ宿泊数の85.4%は、今も韓国人が占める[2]。
宿の種類別に見ると、宿泊予約に占めるゴルフ場テーマの宿の割合は、過去3年でそれ以前より199.3%高まった。温泉と結びついた宿は98.9%、ウォーターパークと結びついた宿は56.5%伸びた[2]。英語版の報道はこれを予約件数の伸びとして伝えているが[1]、韓国語の報道では予約に占める割合(比重)の伸びとされている[2]。

逆に、スパやプールヴィラのように館内の設備を売りにする宿は減った[1][2]。空港シャトルや個人用ロッカーを備えた宿の予約も大きく伸び、移動のしやすさも選ぶ基準になっている[2]。KTOはこれを、旅行者の関心が「部屋の中」から「部屋の外」へ移った結果とみている[2]。なお、ゴルフ場テーマの宿の伸びが外国人と韓国人のどちらによるものかは、公表された範囲では示されていない。
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なぜコースの利用者は減るのに、ゴルフ場テーマの宿は伸びるのか
コースの内場者数とゴルフ場テーマの宿の予約は、別々の集計で指標も違う。内場者数はゴルフ場を利用した年間の延べ人数で[3]、日帰りか泊まりがけかは分けて示されていない。ゴルフ場テーマの宿の数字は宿泊予約に占める割合の伸びで、予約の件数や、宿泊客が実際にプレーしたかどうかは示されていない[2]。宿泊を伴うゴルフが内場者数のどれだけを占め、減少をどこまで補っているかは、2つのデータからは言えない。

コースを離れた需要の行き先としてアジア経済が挙げるのは、若年層のスクリーンゴルフ、中高年層のパークゴルフ、日本や東南アジアでの海外ゴルフだ[3]。一方、KTOのデータが示すのは宿を選ぶ基準の変化で、ゴルフ場は温泉やウォーターパークと並んで「泊まる理由」として数えられている[2]。KTOの担当者は、公演・スポーツ・レジャー施設を宿泊や交通、地域の商業と有機的に結びつけ、地域ごとに異なる「1泊の理由」をつくる必要があると述べている[1][2]。プレーする人の数と、ゴルフ場を目当てにした宿泊は、別の指標として見る必要がある。
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外国人客はどの地域に泊まり、どこの宿泊予約が伸びたのか
KTOの集計では、宿泊に占める外国人の割合は仁川が27.3%で最も高く、ソウル26.3%、済州25.9%、釜山20.7%と続き、いずれも全国平均の14.6%を上回った[1][2]。これは各地域の宿泊のうち外国人が占める割合で、外国人宿泊の伸び率ではない。外国人の宿泊に占める首都圏以外の割合も、39.5%から43.0%に上がった[2]。

地域別の宿泊予約では、江原道の平昌郡、慶尚北道の安東市、釜山の機張郡で、予約に占める割合の伸びが大きかった[1][2]。これは国籍を問わない宿泊全体の数字で、外国人やゴルフ宿泊に限ったものではない。
| 地域 | 宿泊予約に占める割合の伸び(過去3年) | KTOが挙げた背景 |
|---|---|---|
| 平昌郡(江原道) | 116.9%増 | ホテル・リゾートと大型レジャー施設を一緒に楽しみやすい |
| 安東市(慶尚北道) | 106.4%増 | 鉄道など交通の改善、古宅での民泊や夜景ツアーの拡大 |
| 機張郡(釜山) | 78.5%増 | ホテル・リゾートと大型レジャー施設を一緒に楽しみやすい |
公演も宿泊の理由になっている。大きな公演がある週の宿泊予約は、公演のない週より16.4%多かった[1][2]。Kポップ公演では、外国人の予約の伸び率が国内客の6.1倍だった[1][2]。宿の外で何をするかが泊まる場所を左右するというのがKTOの分析で、ゴルフ場もその選択肢の一つに数えられている[2]。
日本のゴルフ場利用者数と宿泊データはどうなっているのか
日本のゴルフ場利用者数は、日本ゴルフ場経営者協会(NGK)がゴルフ場利用税の納付データをもとに毎月集計し、速報値として公表している[4]。2025年度(2025年3月〜2026年2月のプレー)の利用者数は8749万8000人で、前年度から5万3000人(0.1%)減った。NGKはこれを「横ばい」と表している[5]。ただし70歳以上の利用者は0.7%減の2064万7000人で、減少に転じたという[5]。月単位では振れが大きく、2026年5月は904万人で前年同月比5.5%増[6]、6月は715万5000人で7.6%減だった[4]。韓国の内場者数が2025年に前年比2.1%減と3年連続で減ったのに対し[3]、日本の年度の数字は横ばいにとどまる。月次の増減だけでは、韓国のような継続的な減少かどうかは判断できない。
宿泊側のデータは、日本にも地域単位の仕組みがある。観光予報プラットフォームは宿泊の実績と予約のデータをもとに、都道府県・市区町村ごとの宿泊者数や、6カ月先までの宿泊動向を提供している[7]。ただ、KTOのようにゴルフ場や温泉といった周辺の活動別に宿泊予約の割合を追った集計は、公開情報では見当たらなかった。
| 比較軸 | 韓国 | 日本 |
|---|---|---|
| ゴルフ場利用者数の傾向 | 2025年4641万人、3年連続減(2022年比8.2%減)[3] | 2025年度8749万8000人、前年度比0.1%減で横ばい[5] |
| 宿泊データの基盤 | 韓国観光データラボ(携帯電話・カード・宿泊予約)[1] | 観光予報プラットフォーム(宿泊の実績・予約)[7] |
| 周辺の活動別の宿泊予約 | ゴルフ場テーマの宿の予約比率が3年で199.3%増[2] | — |
—は公開情報で確認できなかった項目。
まとめ
KTOのデータは、韓国で宿を選ぶ基準が客室の設備から、近くでゴルフや温泉、公演を楽しめるかへ移っていることを示す[1][2]。宿泊予約に占めるゴルフ場テーマの宿の割合は過去3年で199.3%高まった一方、全国のゴルフ場の内場者数は3年連続で減った[3]。2つは別の集計で、宿泊を伴うゴルフがコース利用全体をどこまで支えているかまでは読み取れない。ただ、コースの利用者数だけを追っていると、ゴルフ場が泊まる理由として選ばれるようになった変化は見えない。日本のゴルフ場利用者数は2025年度が横ばいで[5]、周辺の活動別に宿泊予約を追った公開データは見当たらなかった。
よくある質問(FAQ)
Q. ゴルフ場テーマの宿とは具体的にどんな施設ですか。
A. KTOは「ゴルフ場テーマの宿」という分類で集計しているが、報道では定義や施設名は示されていない。温泉やウォーターパークと結びついた宿と同じく、周辺の活動を目当てに選ばれる宿として扱われている[1][2]。
Q. 韓国のゴルフ場利用者はいつから減っていますか。
A. 2022年の5058万人をピークに、2023年以降3年連続で減少している[3]。
Q. 日本でも同じ現象は起きていますか。
A. 日本のゴルフ場利用者数は2025年度が8749万8000人で前年度比0.1%減の横ばいだった[5]。ゴルフ場と結びついた宿泊予約の伸びを示す公開データは見当たらず、宿泊側の変化は判断できない。
出典
- Golf-Themed Stays Surge 199% as Korean Travelers Chase Activities, Seoul Economic Daily, 2026-09-02(記者: Cho Su-yeon). https://en.sedaily.com/culture/2026/09/02/golf-themed-stays-surge-199-percent-as-korean-travelers
- 관광공사, 데이터로 본 ‘요즘 숙박 트렌드’ 발표…1박 이유는 숙소 밖에(観光公社、データで見た「最近の宿泊トレンド」を発表…1泊の理由は宿の外に), ニュースピム(뉴스핌), 2026-08-31(記者: Yang Jin-young). https://www.newspim.com/news/view/20260831000772
- ‘국내 골프장 이용객 어디로 갔나’…3년 연속 감소(国内ゴルフ場の利用客はどこへ、3年連続減少), アジア経済(아시아경제), 2026-03-23(記者: Noe Rae). https://www.asiae.co.kr/article/2026032012074904448
- 2026年6月度全国ゴルフ場利用者数・ゴルフ場数(速報値、ゴルフ場利用税の納付データに基づく), 日本ゴルフ場経営者協会, 2026-09-04. https://www.golf-ngk.or.jp/news/2026/riyosya/2026.6riyosya.pdf
- 2026年2月度全国ゴルフ場利用者数について(参考事項「2025年度全国ゴルフ場利用者数速報値」), 日本ゴルフ場経営者協会, 2026-05-26. https://www.golf-ngk.or.jp/news/#2026.5.26
- 2026年5月度全国ゴルフ場利用者数・ゴルフ場数(速報値), 日本ゴルフ場経営者協会, 2026-08-12. https://www.golf-ngk.or.jp/news/2026/riyosya/2026.5riyosya.pdf
- 観光予報プラットフォーム, 観光予報プラットフォーム推進協議会. https://kankouyohou.com/

