待ち続けたApproach S80、その答えはFenix 8だった


※本記事で引用した情報源・参考記事はすべて末尾の「参考記事・情報源」セクションにまとめています。

2025年12月、私はこのブログで「Garmin Approach S80(仮)の予測」という記事を書いた。
Approach S62(2020年)→S70(2023年5月)という約3年半のサイクルから逆算して、「2026年前半には後継機が来るのでは」と予測した内容だった。Garminの特許情報(磁気回転クラウン機構)もその根拠のひとつとして取り上げた。

あれから4ヶ月が経った。2026年4月15日現在、Approach S80は存在しない。

正確に言うと、FCC申請、Garmin公式サイト、プレスリリース、小売店の製品ページ、信頼性の高いガジェット系リーク情報——いずれにも「Approach S80」の名前は一切出てきていない。そして今、私は「もう出ないかもしれない」と考えるようになっている。

この記事は、その理由を改めて整理したものだ。予測記事を書いた側として、自分の見立てがどこで外れたのかを検証しながら、ゴルフGPS時計の今後を考えたい。


まず最初に:「Approach S80」という名称は仮称にすぎなかった


当時の予測記事では、私は「S80(仮)」と明記していた。しかし今振り返ると、その「仮」というカッコの重みが足りなかったかもしれない。

Garminのウェアラブル製品のリーク情報を最も精力的に追っているthe5krunner.comは、2026年4月時点の最新予測記事でApproach Sシリーズの後継機について一切言及していない(情報源:the5krunner.com「April 2026 update: Garmin Rumours, Leaks & Speculation」)。GarminRumors.comの2026年展望記事でも同様だ。ガジェット系メディアのNotebookCheckやTomsGuideでも、S80という名称は出てこない。

「Approach S80」という製品名で情報が出てくるのは、私のブログmegumirai.comの予測記事くらいだ。自分で広めてしまった名称を、今自分で訂正している——そういう状況である。

念のため補足しておくと、「後継機が出ない」という公式情報もない。Garminはキャンセルを発表していないし、そもそも存在を認めたことがない製品を「キャンセル」することはできない。ただ、状況を冷静に見ると、「単純な延期」という説明よりも、もっと構造的な理由があるように思える。


Garminが2026年に発表したゴルフ新製品は「別の方向」だった


2026年に入ってGarminがゴルフ関連で発表した製品は3つある。

  • Approach J1($299.99):ジュニアゴルファー専用GPSウォッチ。ティーオフ推奨位置・パーソナルパー・ペースオブプレイタイマーなどを搭載。1.2インチAMOLEDタッチスクリーン。(情報源:Golf Monthly「Garmin Has Revealed Two Clever New Golf GPS Devices For 2026」2026年1月)
  • Approach G82($599.99):G80の後継ハンドヘルドGPS+弾道計測器。5インチ高解像度タッチスクリーン、クラブスピード・ボールスピード・キャリー距離・グリーン傾斜マッピング・ライブ風速表示を搭載。(同上)
  • Xero L60i:レーザーレンジファインダーの新モデル。

いずれも、Approach Sシリーズの後継ではない。J1はジュニア向けの新カテゴリ、G82はハンドヘルドの刷新、Xeroはレンジファインダーだ。Garminのゴルフラインナップは確かに動いているが、フラッグシップウォッチの方向にはほぼ動いていない。

Approach S70は2023年5月の発売から約3年が経過し、現在も米国公式価格649〜699ドルで販売されている。値下げの動きもない。Garminがあえてフラッグシップウォッチを刷新しない理由は何か。その答えが次の話につながる。


Fenix 8がApproach S70の機能をほぼ吸収した——これが本質的な変化


2024年8月にFenix 8が発売されたとき、ゴルファー向けメディアの反応は驚くほど一致していた。「S70が持つゴルフ機能の全てをFenix 8は持っている」という見立てだ。

具体的に確認すると、Fenix 8のAMOLEDモデルはApproach S70と同等の以下の機能を搭載している。

  • 4万3,000以上のコースデータ
  • PlaysLike距離(傾斜・気圧・風速・気温を考慮した補正距離)
  • Virtual Caddie(AIによるクラブ推薦)
  • 自動ショットトラッキング
  • PinPointer・Green View・ハザードビュー
  • 風向風速表示
  • タッチターゲティング
  • 自動スコアリングとハンディキャップ計算

ゴルフ専門レビューサイトのBreakingEighty.comは「Fenix 8はゴルフ機能においてS70が持つ全てを備えており、使った中で最高のゴルフウォッチ」と評している(情報源:breakingeighty.com「Garmin Fenix 8 Review: The Best Golf Watch You Probably Shouldn’t Buy」)。PlayBetterも「Fenix 8はApproach S70にできること全てに加え、膨大なフィットネス・ライフスタイル機能を提供する」と総括した(情報源:playbetter.com「Garmin Golf Watches for 2024」)。


Garminの公式フォーラムでも、スタッフが「Fenix 8 AMOLEDやEpix ProはS70と同じゴルフ機能を全て提供している」と述べており、社内でもこの機能的重複は明確に認識されている(情報源:forums.garmin.com「Purchase S70 or wait?」)。


もちろん、Approach S70にしかない機能も残っている。Swing Tempo練習モード、TruSwing互換性、最新のCT1クラブセンサー対応(Fenix 8はCT10のみ)、そして18ホールをひと目で確認できる専用ゴルフベゼルだ。しかしこれらは「核心的な差異」とは言いにくい。コース上でスコアを改善するための基本機能は、ほぼ完全に共通化された。

この状況で、Garminが999ドル〜のFenix 8と同じゴルフ機能を持つ専用機を649〜699ドルで投入する意義は何か。価格差での差別化はあるが、それだけのために新型専用機を開発・製造するコストが見合うかという問題が出てくる。


Garminのライン戦略:Approachの「存在理由」が価格帯に集約されてきた


2025年1月に投入されたApproach S44(299ドル)とS50(399ドル)を見ると、Garminの戦略がかなり明確に見えてくる。

S44はAMOLEDディスプレイを搭載したゴルフ専用機を300ドル以下で提供する製品だ。S50は心拍計やBody Batteryなどの健康トラッキングも加えた「ゴルフ+日常使い」の中間モデルとして位置づけられた。MyGolfSpyはS50を「残りの人たちのためのゴルフスマートウォッチ」と表現した(情報源:mygolfspy.com「I’m Having A Hard Time Finding Anything To Dislike About My New Garmin Watch」)。

現在のGarminゴルフウォッチのラインナップを整理するとこうなる。

モデル 価格帯 位置づけ
Approach S12 / S44 150〜299ドル エントリー。ゴルフ専用、シンプル設計
Approach S50 399ドル ミッド。ゴルフ+健康管理の兼用機
Approach S70 649〜699ドル プレミアム専用機。Fenix 8との機能重複が拡大
Fenix 8 / Epix Pro 999ドル〜 マルチスポーツ機。ゴルフ機能はS70と同等
MARQ Golfer Gen2 2,300〜3,100ドル ラグジュアリー。FenixベースにゴルフベゼルとTi/CFR素材

この表を見ると、エントリー〜ミッドレンジのApproachには明確な存在意義がある。この価格帯にFenixは競合しないからだ。しかしプレミアムゾーン(S70)については、Fenix 8との機能差が縮小し続けており、300ドルの価格差を正当化する理由がゴルフ専用UI・軽量性・デザインに限られてきている。

GarminRumors.comは「本気のゴルファーならApproach S70が最強。ゴルフに加えてランニング、ハイキング、トライアスロンもやるなら、Fenixが堅実なゴルフサポートを提供する」と整理した(情報源:garminrumors.com「Your Guide to Garmin Golf Features: Every Watch Compared」)。この棲み分けは今でも成立するが、境界線は薄くなっている。


Fenix 9の見通し:ゴルフ統合はさらに深化する可能性


ここからは予測の話になる。Fenix 9は2026年4月時点で未発表だが、2026年夏〜秋の発売が業界コンセンサスになっている。(予測)

最大の根拠は、2025年Q4決算説明会でのGarmin CEO Cliff Pembleの発言だ。Pembleは「2026年のアウトドア部門は多数の新製品投入が成長を牽引する」「多くの製品発売は下半期(back half of the year)に集中する」と明言している(情報源:the5krunner.com「Fenix 9 in 2026, Not 2027 — Garmin’s Own Words Confirm What We’ve Been Saying All Along」2026年2月)。

歴史的なサイクルもこれを裏付ける。Fenix 7からFenix 8まで約31ヶ月。Fenix 8が2024年8月発売であれば、約24ヶ月後は2026年8月頃となる(情報源:hmmuller.com「Garmin Fenix 9: everything we know about the 2026 launch」)。

ただし、具体的なスペックリークは2026年4月時点で一切存在しない点は強調しておく。the5krunnerは2026年3月の記事で「この段階ではFenix 9に関する具体的な噂はない。存在すると主張するメディアは間違っている」と明言している(情報源:the5krunner.com「Garmin Fenix 9: Expected Features, Release Date and Predictions」2026年3月)。

特許情報から推測される注目技術は以下の通りだが、これらが実際に搭載される保証はない。(予測)

  • パルス分光法による糖化ヘモグロビン(HbA1c)推定(2026年2月公開特許 US 20260033750)
  • GNSS・LTE・衛星通信の統合アンテナ設計(2026年3月出願の特許群)
  • 磁気回転クラウン機構(2025年11月特許)

ゴルフ機能については、Fenix 8で既にS70とほぼ同等に達しているため、Fenix 9ではCT1クラブセンサー対応・Swing Tempo搭載など、残された差異の解消が進む可能性がある。(予測) そうなれば、プレミアムゾーンでApproach Sシリーズが独自性を打ち出せる領域はほぼなくなる。


Apple Watchとの競争も無視できない


ゴルフGPS時計市場は2024年時点で推定32億ドル規模(情報源:futuredatastats.com「Golf GPS Watches Market Size & Industry Growth 2030」)とされ、2032年まで年率8.5%で成長が見込まれている。しかしこの成長は「Garmin一強」を約束するものではない。

Apple Watchは、ArccosCaddieやGolfshotなどのサードパーティアプリを通じてゴルフ機能を急速に充実させている。AIオートショットトラッキングはすでに実用レベルにあり、2024年5月にはAppleがApple Watchを「完璧なゴルフのお供」として公式に訴求するプレスリリースを出した。エコシステムがiPhoneとシームレスに連携する利便性は、ガジェット慣れしていないゴルファーにとって大きな魅力だ。

もちろん、バッテリーライフ・GPS精度・コースデータベースの充実度ではGarminに一日の長がある。ラウンド中18ホールを通して安定して使えるGPSウォッチとしての完成度は、現時点では圧倒的にGarminが上だ。しかし「専用機でなければできないこと」の領域は年々狭くなっている。

この構造変化の中で、Garminが新たな専用ゴルフウォッチに多額の開発投資を振り向ける理由は薄れている。むしろ、Fenix 9にゴルフ機能を集約して上位機を一本化し、エントリー〜ミッドのApproachで低価格帯を押さえるというシナリオの方が戦略的に合理的だ。


自分の予測記事を振り返って:何が足りなかったか


2025年12月の予測記事で私が根拠にしたのは、主に「製品サイクルの周期」と「特許情報」だった。しかしどちらも、「後継機が出るかもしれない」という可能性を示す情報ではあっても、「S80という名前で出る」「2026年前半に出る」という具体的な予測を支えるには根拠が薄かった。

特許については、出願と製品化の間には通常2〜5年のギャップがある。Garminの特許は量が多く、出願されたものの実際に製品化されなかった技術も無数にある。特許を「近日発表のヒント」として扱ったのは楽観的すぎた。

製品サイクルについても、Fenix 8がS70の機能をほぼ吸収したという2024年の構造変化を、十分に織り込んでいなかった。周期だけを見て「次が出る」と推測するのは、市場・技術・戦略の文脈を見落としやすい。

加えて、「S80(仮)」という名称を使ったことで、仮称が一人歩きするリスクがあった。実際、検索するとこの名称での記事は自分のブログの予測記事しか出てこない状況だ。


今、ゴルフGPS時計を選ぶならどうすべきか


これは純粋に個人的な見解だが、現時点での選択基準はシンプルに整理できると思っている。

ゴルフ専用で割り切る・予算を抑えたい、というならApproach S50(399ドル)が2025年で最も完成度が高い新製品だ。ゴルフ機能の網羅性はS70には届かないが、日常健康管理との兼用で考えれば費用対効果は高い。

ゴルフに加えてランニングやハイキングも真剣にやっていて、予算を妥協したくないならFenix 8 AMOLEDが現時点のベストアンサーだ。PlaysLike距離・Virtual Caddie・自動ショットトラッキングは全て動く。ゴルフ機能だけなら「S70と同等」という複数の専門レビューが出ている。

私自身はApproach S70を使っていて、コース上でのPlaysLike距離と風の表示は毎ラウンド活用している。Virtual Caddieの番手推薦も参考にしている。S70に大きな不満はないが、もし今から買い直すなら、Fenix 9が出るまで待つか、Fenix 8 AMOLEDに一本化するか、という二択になると思っている。

S80(仮)を待つ理由は、今のところない。


まとめ


  • 「Approach S80」は2026年4月時点でFCC申請・公式発表・リーク情報のいずれにも存在しない。仮称として広まった名称だった。
  • Garminの2026年ゴルフ新製品はApproach J1(ジュニア向け)・G82(ハンドヘルド)・Xero L60i。Sシリーズの刷新はなし。
  • Fenix 8がApproach S70のゴルフ機能をほぼ吸収したことで、専用機新規開発の必要性が低下している可能性がある。
  • Fenix 9は2026年後半に発売が見込まれる。(予測)CEO発言と過去のサイクルが根拠。具体的なスペックリークはまだない。
  • Approach Sシリーズは「価格帯での棲み分け」へシフトしており、プレミアムゾーンの専用機という存在意義が薄れつつある。
  • 今買うならFenix 8 AMOLEDまたはApproach S50。S80を待つ根拠は現時点では見当たらない。

予測記事を書いておきながら、結果的に読者の方に「2026年前半に出そう」という印象を与えてしまったとしたら、申し訳なかった。今後は特許や周期だけでなく、FCC申請・流通在庫の動き・公式のロードマップ発言など、より多角的な根拠を揃えてから予測記事を書くようにしたい。

2026年後半にGarminがどんな新製品を出してくるか——それは引き続き注視していく。


参考記事・情報源

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