Bedrockモデル廃止が最短45日に、運用体制の見直し方

Amazon Bedrock(AWSの基盤モデルAPIサービス)経由で複数の基盤モデルを業務アプリに組み込み、社内のAI活用を情シスが集中管理している数千人規模のエンタープライズ企業では、AI基盤担当者がモデル廃止の通知にどう備えるかが運用上の課題になっている。AWSは、Bedrockのモデル廃止ポリシーを2026年9月7日以降にローンチするモデルから切り替えた[1]。この日以降にローンチされる新モデルは、モデルカード(個々のモデルの仕様と提供状態を示すAWS公式ページ)ごとに定められた「Legacy期間」(EOL=End of Life、提供終了に至るまでの猶予期間)が6か月または45日のいずれかになる[1]。従来は最短でも6か月の通知が確保されていたが、新方式では一部のモデルで最短45日まで縮む。折しも同じ9月には、旧ポリシー下のモデルでClaude 3 HaikuやAmazon Nova PremierなどのEOLが相次いで設定されている[2]。稟議やベンダー選定に数週間から数か月を要する日本企業にとって、45日という期間は運用体制の作り方そのものを問い直す契機になる。本稿は、新旧ポリシーの違いと、切替を前提にした運用体制の整え方を解説する。

予備知識

  • Amazon Bedrock: AWSが提供する基盤モデルAPIサービス。Anthropic、Amazon、AI21 Labsなど複数プロバイダーのモデルをAPI経由で利用できる
  • モデルカード: 個々のモデルの仕様・提供状態を示すAWS公式ページ。EOL予定日やLegacy期間の長さもここに記載される
  • Legacy期間: モデルがEOL(提供終了)を迎える前の猶予期間。利用は続けられるが、新規顧客の利用開始はできなくなる
  • EOL(End of Life): モデルが全リージョンから削除され、以後の呼び出しが失敗する状態になる日

モデル切替を前提にした運用の型を作るなら、機械学習システムの構築と運用を体系的に扱う一冊が土台になる

何が変わったか——2026年9月7日で新旧ポリシーが分かれる

AWSのBedrock公式ドキュメントは、2026年9月7日以降にBedrockへローンチされるモデルに新しいライフサイクルポリシーを適用すると明記している[1]。それより前にローンチされたモデルには、従来どおりの旧ポリシー(Legacy版ページに記載)が引き続き適用される[2]。

旧ポリシーでは、モデルはローンチから最低12か月はBedrock上に留まり、Legacy状態に入ってからEOLまで最低6か月の通知期間が確保されていた[2]。さらにEOL日が2026年2月1日以降のモデルは、Legacy期間の途中(最低3か月経過後)から「有償延長利用期間」に入り、プロバイダーが設定する値上げを受け入れれば引き続き利用できる仕組みもあった[2]。

新ポリシーではこの構造が簡素化された。モデルは常にActive・Legacy・EOLのいずれかの状態にあり、モデルカードには「EOLはこの日より前には来ない」という下限日と、Legacy期間の長さ(6か月または45日)が示される[1]。Legacy状態に入った時点でEOL日が確定し、モデルカードに追記される[1]。旧ポリシーにあった有償延長利用期間についての記載は、新ポリシーのページには見当たらない。

ローンチ日が9月7日より前か後かで、モデルに適用される廃止ポリシー(最低12か月・6か月通知 対 モデルカード依存・6か月か45日)が分岐するフロー図
2026年9月7日を境に新旧のモデル廃止ポリシーが分かれる

モデル廃止のような外部要因に振り回されない社内統制の考え方を、リスクマネジメントの視点から整理している

通知期間はどう決まるか——モデルカードの6か月枠と45日枠

新ポリシーの核心は、通知期間がモデルごとに変わる点だ。モデルカードに記載される「Legacy期間」は6か月と45日の2種類があり、AWSは「ほとんどのモデルは6か月のLegacy期間を持つ」としている[1]。裏を返せば、一部のモデルは45日に設定される。

Legacy状態に入った通知を受け取った時点から数えて、6か月か45日のどちらかしか猶予がない。該当は個別のモデルカードでしか確認できず、全モデルに半年の猶予があると想定して運用体制を組むと、45日側のモデルで対応が間に合わない恐れがある。

項目旧ポリシー(2026/9/7より前ローンチ)新ポリシー(2026/9/7以降ローンチ)
ローンチからEOLまでの最低期間12か月規定なし(モデルカードのEOL下限日に依存)
Legacy期間(通知〜EOL)最低6か月モデルカードごとに6か月または45日
有償延長利用の仕組みあり(EOLが2026/2/1以降のモデル対象)記載なし
通知の確認場所Legacy版モデル一覧ページ各モデルのモデルカード

Legacy状態に入ると新規顧客はそのモデルの利用を開始できず、既存顧客も15日間利用がないとアクセスを失う可能性がある点、Provisioned Throughput(専有スループット)の新規作成ができなくなる点は旧新で共通している[1][2]。

Legacy期間(通知からEOLまで)の最短日数
クラウド/移行

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9月に相次いだEOL——Claude 3 Haiku、Nova Premier、Nova Sonicの実例

新ポリシーへの切替と同じ9月に、旧ポリシー下のモデルのEOLが集中している。AWS公式の旧ポリシーページに記載されたLegacy・EOL日の一覧によると[2]、Claude 3 HaikuはLegacy期間開始が2026年3月10日、EOLが2026年9月10日だった。Amazon Nova PremierとNova Sonicは、Legacy期間開始が3月13日、EOLが9月14日で並ぶ。画像・動画生成のNova CanvasとNova Reelは、Legacy期間開始が3月30日、EOLが9月30日だ[2]。

これらはいずれも旧ポリシーの最低6か月のLegacy期間どおり、通知から半年でEOLに達する日程だ(本稿執筆時点でNova CanvasとNova Reelは未到来)。新ポリシーが適用される9月7日以降ローンチのモデルでは、この半年という前提が保証されなくなる。旧ポリシー下の事例で半年あれば足りていた切替作業を、45日枠に当たるモデルでは4分の1以下の期間でこなす必要が出てくる。

2026年9月10日にClaude 3 Haiku、9月14日にNova PremierとNova Sonic、9月30日にNova CanvasとNova ReelのEOLが並ぶタイムライン図
2026年9月に集中する旧ポリシー下の主なEOL
クラウド/移行

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稟議とベンダー選定のリードタイムに45日は足りるか

45日という猶予が、日本企業の変更承認フローとどれだけかみ合うかを検討する。数百〜数万人規模の企業では、本番システムで使う外部APIの切替に稟議を要することが多い。

起案から情報システム部門の承認、必要に応じたSIerなど外部委託先への作業依頼、リリース前のテストまでを合わせると、数週間から数か月かかることは珍しくない。担当者の裁量で当日中に切替判断ができる米国の小規模なプロダクトチームとは、前提が異なる。

45日という猶予は、稟議の起案から承認までだけで使い切ってしまう組織もある。しかも通知はモデルカードの更新という形で届くため、能動的に監視していなければ気付かない。代替モデルの検証にベンダー選定や社内のセキュリティレビューを伴う場合、45日枠のモデルでは規定の手続きを期間内に終えられない可能性がある。

項目米国型の小規模チーム日本企業(数百〜数万人規模)
切替の意思決定担当者の裁量で即日〜数日起案から承認まで稟議を要する
ベンダーの関与内製で完結することが多いSIer・委託先への作業依頼が前提
切替のリードタイム数日〜数週間数週間〜数か月
モデルカードでLegacy期間を確認し、45日か6か月かで稟議の進め方を分け、代替モデルを検証してから切替・検証する対応フロー図
通知受領から切替までの対応フロー(45日枠を想定)

IT部門の判断: 利用中のモデルのモデルカードを定期的に確認し、Legacy期間が45日に設定されているモデルを先に洗い出しておく。

決裁側の判断: 45日枠のモデルに限定した稟議の簡易承認ルートを、平時のうちに用意するかを検討する。

まとめ

AWSは2026年9月7日、Bedrockのモデル廃止ポリシーを改定し、同日以降にローンチされる新モデルの通知期間をモデルカードごとに6か月または45日に設定する方式へ切り替えた[1]。旧ポリシーで確保されていた最低6か月という前提は、新方式では一部のモデルに限り45日まで縮む。同じ9月にはClaude 3 HaikuやAmazon Nova Premierなど旧ポリシー下の複数モデルが実際にEOLを迎え、通知から半年の猶予があっても切替作業には相応の準備期間が要ることを示した[2]。

IT部門の次の一手は、利用中のモデルのモデルカードを確認し、Legacy期間が45日に設定されているモデルを先に洗い出すことだ。決裁側の判断材料は、45日枠のモデルに限定した稟議の簡易承認ルートを用意するかどうかになる。通知期間の短縮は、モデル切替の自動化だけでなく、承認フロー側の見直しも迫っている。

よくある質問(FAQ)

Q1. 新ポリシーは、すでに使っているモデルにも適用されますか。
A. いいえ。9月7日より前にローンチされたモデルには、従来の旧ポリシー(Legacy期間最低6か月、最低12か月の提供期間)が引き続き適用される[1][2]。

Q2. Legacy期間が6か月か45日かは、どこで確認できますか。
A. 各モデルのモデルカードに記載されている[1]。「ほとんどのモデルは6か月」とされるが、個別に確認しない限り45日側かは分からない[1]。

Q3. Legacy期間に入ったモデルを使い続けるとどうなりますか。
A. 新規顧客は利用を開始できず、既存顧客も15日間利用がないとアクセスを失う可能性がある。EOL日を過ぎるとモデルは全リージョンから削除され、呼び出しは失敗する[1]。

出典

[1] AWS公式ドキュメント「Model lifecycle」 https://docs.aws.amazon.com/bedrock/latest/userguide/model-lifecycle.html
[2] AWS公式ドキュメント「Model lifecycle (Legacy)」 https://docs.aws.amazon.com/bedrock/latest/userguide/model-lifecycle-legacy.html