70歳以上ゴルファーの伸びが止まった ゴルフ場利用税の統計で見るシニア需要の変化

ゴルフ場の客のうち、70歳以上の利用者がここ1年ほとんど増えていない。日本ゴルフ場経営者協会(全国のゴルフ場経営会社でつくる業界団体)の月次速報を本稿で12か月分合計すると、2025年7月〜2026年6月の非課税利用者は2,077万人で、前年同期比0.25%増にとどまった[2]。その前の1年(2024年7月〜2025年6月)は2.5%減っていたので、減少のあと横ばいに戻った形だ[2]。非課税利用者とは、ゴルフ場利用税がかからない利用者のことで、協会によると9割以上を70歳以上が占める[1][4]。

この数字が目を引くのは、コロナ禍をはさんだ数年間とまったく違う動きだからだ。2019年度から2023年度にかけて、主に70歳以上の非課税利用者は11.3%増えていた[1]。団塊の世代が75歳以上になり客が減るとされた「ゴルフ場の2025年問題」についても、協会は2023年度の速報で、心配されたコロナ収束後の減少は顕著に現れなかったとしている[1]。ただし、伸びはその後止まった。

ゴルフをする側として影響が出やすいのは、平日のコースの混み具合と平日料金だ。同協会は70歳以上の層を「平日利用が中心」と位置づけている[1]。ゴルフ場利用税の統計には平日と休日の区分がないため、平日への影響はこの見立てにもとづく推論になる。平日の主力客が増えなくなれば、ゴルフ場は平日の枠をほかの層で埋める必要に迫られる。

ビジネス側の論点は、年齢別人口の山の移動が需要の伸びをどう止めるかにある。本稿では、税の記録から作られた統計と人口推計を重ね、伸びが止まった理由と、ゴルフ場利用税の税収構造への影響を読み解く。

ゴルフ場利用者数の統計は何を数えているのか?

日本ゴルフ場経営者協会の月次速報は、ゴルフ場利用税の納付記録をもとに都道府県別の利用者数を集計したデータだ[2]。ゴルフ場利用税は、ゴルフ場の利用者1人1日ごとに都道府県が課す税で、標準税率は800円、上限の税率は1,200円と定められている[4]。

18歳未満、70歳以上、障害者などは非課税で、この仕組みは平成15年度に作られた[4]。そのため、この統計では利用者が「課税者」と「非課税者」に分かれて集計される。課税者はおおむね18〜69歳の現役層、非課税者は主に70歳以上のシニア層と読める[1]。

期間総利用者課税者非課税者
2019年度→2023年度4.5%増2.5%増(70歳未満)11.3%増
2024年7月〜2025年6月(前年同期比)2.6%減2.6%減2.5%減
2025年7月〜2026年6月(前年同期比)0.64%増0.76%増0.25%増

出典: 日本ゴルフ場経営者協会[1][2]。中段と下段は各月速報値を本稿で合計して算出。

上段は2023年度の年間速報で協会が示した増加率で、中段と下段は1年間の前年比である。期間の長さは違うが、非課税者だけが突出して伸びていた構図は、2024年7月からの1年でいったん全体と同じ率の減少に変わった。協会も2024年度(2024年3月〜2025年2月)の利用者を2.5%減と速報している[1]。直近の1年は横ばいに戻ったものの、非課税者の伸びは課税者より小さい。全体の利用者は8,774万人で、前年同期とほぼ同じ水準を保っている[2]。

一方で、この統計に数えられるゴルフ場の数は減り続けている。6月の集計対象は2024年が2,175コース、2025年が2,166コース、2026年が2,153コースで、2年間で22コース減った[2]。利用者が横ばいでコースが減っているため、1コースあたりの利用者はわずかに増えている計算になる。

人口の年齢構成の変化が、業界ごとの需要と人手にどう効いてくるかを整理した一冊。ゴルフ場の客層の変化を、ほかの業界と並べて考えたい読者に。

70歳以上のゴルファーはなぜ増えなくなったのか?

最も大きな理由は、70歳以上の入り口にあたる70〜74歳の人口が減っていることだ。総務省統計局が2026年9月20日に公表した推計によると、70歳以上人口は2,911万人で、前年から8万人しか増えていない[3]。同じ期間に75歳以上は43万人増え、80歳以上は3万人減った[3]。

70〜74歳の人口の推移を示す折れ線グラフ。2020年919万人、2025年778万人、2026年743万人、2030年は推計683万人
70〜74歳の人口は2020年から約2割減り、2030年まで減り続ける見通し

70〜74歳の人口は、統計局の表から70歳以上と75歳以上の差を取ると求められる。2020年は919万人だったが、2026年は743万人で約2割減った[3]。国立社会保障・人口問題研究所の推計を使うと、2030年には683万人まで減る見込みだ[3]。

人数の多い世代が、70代前半を通り過ぎて75歳以上へ移ったことになる。70代前半の人数そのものが減る一方、80代に近づいた層はプレーの頻度を落としていく。egolf.jpのコラムでも、ゴルフ場関係者の話として、70代は現役でプレーするが80代で退会が増えるという会員構造が紹介されている[7]。

人数の多い世代が75歳以上へ移って70〜74歳の人口が減り、80代に近づく層はプレー頻度が下がり、その両方で非課税利用者が横ばいになる流れを示す図
70歳以上の利用者が伸びなくなった流れ

協会は2026年5月の結果に、この変化の兆しを見ている。5月は好天で総利用者が5.5%増えたが、非課税者は0.8%減った[1]。協会はこれを、平日利用が中心の70歳以上の層が、プレー頻度の低下や引退による構造的な減少期に入りつつある表れだと分析している[1]。ただし同じ年の3月は7.1%増、4月は3.0%増で、1〜6月の合計では約1%増えている[2]。月ごとの動きは、まだ一方向に定まっていない。

何年にどの年齢層が増え、どの層が減るのかを年表形式で示した定番書。70〜74歳が減り75歳以上が増える流れを、時間軸で押さえるのに役立つ。

ゴルフ場の2025年問題はなぜ目に見える形で来なかったのか?

2025年問題が目に見える形で来なかったのは、人口の山がまだ70代前半にあった数年間、シニアの利用がむしろ増え続けたからだ。協会の集計では、2023年度の利用者は8,982万人で、2019年度より4.5%多かった[1]。そのうち増えた分の半分以上は、主に70歳以上の非課税利用者だった[1]。

協会自身も当時、70歳以上のゴルフ需要は対象人口の拡大に比例して増えていると分析していた[1]。本稿の見方では、「引退で減る」という心配は、引退の前に70代前半の人数が増えていた局面を織り込んでいなかった。予測は方向を間違えたのではなく、時期と形を外したと言える。

2026年1〜6月の非課税利用者の月別推移を前年と比べた折れ線グラフ。前年同月比は1月-4.7%、2月+5.0%、3月+7.1%、4月+3.0%、5月-0.8%、6月-2.6%
2026年1〜6月の非課税利用者は前年比約1%増、月ごとの増減は一方向に定まらない

2026年1〜6月の非課税者は合計1,001万人で、前年同期より約1%多い[2]。月ごとには天候で上下するが、2019年度から2023年度のような大きな伸びは見られない。現れたのは急減ではなく、2024年度の減少のあとの横ばいである。

経営の視点では、この違いが大きい。急減なら撤退や統合の判断が早く迫られるが、横ばいは問題が見えにくい。平日の稼働が「まだ埋まっている」うちに、次の客層をどう取り込むかを考える時間が残っている段階と言える。

ガバナンス/ゴルフテック

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シニア客の頭打ちはゴルフ場利用税に何をもたらすのか?

ゴルフ場利用税の税収は、非課税者ではなく課税者の人数で決まる。税収の10分の7は、ゴルフ場のある市町村に交付される仕組みだ[4]。70歳以上の利用者がいくら増えても、税収は増えない構造になっている。

ゴルフ場の利用者が課税者と非課税者に分かれ、課税者の納めた税が都道府県に入り、その10分の7が市町村に交付される一方、非課税者は税の対象外であることを示す図
ゴルフ場利用税の流れと非課税者の位置づけ

2019年度から2023年度のシニア利用の急増は、ゴルフ場の利用者数は支えたが、この税の税収にはつながらなかった。直近12か月の課税者は6,697万人で、前年同期比0.76%増にとどまる[2]。税収の土台は、70歳未満の現役層がどれだけ来るかにかかっている。

税の見直しを求める動きは、国の要望の場から消えたままだ。文部科学省は令和5年度の税制改正要望から、例年盛り込んでいたゴルフ場利用税の廃止や見直しの要望を外した[6][9]。令和9年度の同省の地方税に関する要望8項目にも、ゴルフ場利用税は含まれていない[5]。

70歳以上がすでに非課税である以上、シニア客の頭打ちは税の議論を動かす材料にはなりにくい。論点が残るのは、税の対象である現役層の利用が細ったときだ。利用税の負担が現役層の来場をどれだけ抑えているかは、公開データでは確認できない。

ガバナンス/ゴルフテック

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米国のシニアゴルファーは日本と同じく頭打ちになるのか?

米国では、2024年時点の分析でシニア層の増加がまだ続いており、日本と同じ頭打ちは確認されていない。全米ゴルフ財団(米国のゴルフ産業の調査機関)の2024年10月の分析によると、65歳以上のゴルファーは約540万人で、この10年で約64%増えた[8]。2029年までは毎日約1万人が65歳を迎えるとしている[8]。

項目日本米国
統計上のシニアの区切り70歳以上(利用税の非課税者)65歳以上
シニア層の直近の動き12か月で0.25%増10年で約64%増
シニアに入ってくる世代70〜74歳人口が減少2029年まで毎日約1万人が65歳に
最大の年齢層—18〜34歳(約630万人)
統計の作り方税の納付記録参加者の調査

※「—」は本稿で確認していない項目。
出典: 日本ゴルフ場経営者協会[2]、総務省統計局[3]、全米ゴルフ財団[8]

違いを生んでいるのは、人口の山の位置と、若い層の厚みだ。米国では最大の年齢層が18〜34歳の約630万人で、コロナ禍後のラウンド数増加の71%は50歳未満のゴルファーによるものだった[8]。日本の統計は税の記録から作られているため、同じ年齢区分で若年層の厚みを比べることはできない。

ビジネス側から見ると、米国でも65歳を迎える人の波は2029年までとされ、その先は日本と同じく入り口の人数が細る局面が来る可能性がある。ゴルフをする側から見ると、日本の平日は今後、シニアで埋まる前提が崩れていく可能性がある。

シニア客が減ると、ゴルフ場と下の世代に何が起きるのか?

直近12か月の非課税利用者は2,077万人で、総利用者の約24%にあたる[2]。協会が平日利用の中心と見るこの層は[1]、入り口の70代前半から今後も細っていく[3]。ここから先は統計の外側の話になるため、本稿の見立てとして整理する。

領域ゴルフ場で起きやすいこと
平日の稼働空き枠が目立ち、値下げで埋めるか、平日の営業日や組数を絞るかで判断が分かれる
料金平日だけ値が下がり、現役層の需要が集まる休日は据え置かれやすい
会員制高齢会員の退会で年会費収入と会員権相場に下押し圧力がかかり、パブリック化や若い層向けの会員制度への見直しが進む
コース数平日の赤字を支えきれないコースから閉鎖や統合が進む。集計対象はすでに2年で22コース減っている[2]
税収税収は課税者の人数で決まるため、シニアの減少そのものの影響は小さい[4]

下の世代にとっての変化は、いつプレーできるかで分かれる。

  • 平日に動ける人(リモート勤務やフレックスで働く人、自営業、早期退職した50〜60代など)は、枠が取りやすく料金も下がる方向の恩恵を受けやすい。ただし近くのコースが閉じれば相殺される
  • 休日しか行けない人は、休日の需要が現役層で埋まったままなので、料金や予約の取りにくさは変わりにくい
  • 会員権の相場が下がれば、40〜50代が会員になる機会は増える。一方で、接待や地域の人間関係を通じたクラブ文化の引き継ぎは薄れていく
  • ハーフラウンドやナイター、練習場との連動など、短い時間で遊べる若い層向けのメニューが増える

長い目で見ると、この谷は一度きりではない。1971〜74年生まれの団塊ジュニア世代が70歳を迎えるのは2041〜44年で、非課税利用者が再び増える局面が来る。それまでの十数年を、平日を誰で埋めて乗り切るかが、ゴルフ場経営の論点になる。

ガバナンス/ゴルフテック

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よくある質問(FAQ)

平日のプレー料金は安くなるのか

安くなるとは言い切れない。70歳以上の客は増えていないが、全体の利用者は横ばいで、コースの数は減っている[2]。平日の空き具合はコースごとの客層によって差が出る。

自分のホームコースは大丈夫なのか

会員や平日の客に70歳以上が多いコースほど、影響を受けやすい。ゴルフ場関係者の話として80代で退会が増えるという会員構造が紹介されており[7]、会員の年齢構成が一つの目安になる。

ゴルフ場利用税はなくなるのか

近いうちになくなる見通しは立っていない。令和9年度の文部科学省の地方税の要望に、ゴルフ場利用税は含まれていない[5]。

まとめ

ゴルフ場の2025年問題は、客の急減という形では来なかった[1]。その代わりに、70歳以上の利用者が2024年度にいったん減り、直近は横ばいにとどまるという形で表れている[1][2]。背景には、70〜74歳の人口が2020年から約2割減ったという人口の山の移動がある[3]。

ゴルフをする読者は、自分が通うコースの平日の客層と会員の年齢構成を見ておくと、料金や予約のしやすさの変化を早めにつかめる。平日に動ける人ほど、枠と料金の面で恩恵を受けやすくなる。ビジネス読者は、需要の急減より伸びの停止の方が見えにくく、次の顧客層への投資判断が遅れやすい点に注意したい。

利用者の総数が横ばいのうちに、平日を誰で埋めるのか。税の記録から作られた統計は、その問いに答えを出す時間がまだ残っていることを示している。団塊ジュニア世代が70歳を迎える2041年ごろまで、この問いは続く。

出典

  1. 日本ゴルフ場経営者協会「NGK News」(2023年度利用者数速報値: 2024年5月8日、2024年度利用者数速報値: 2025年6月20日、2025年9月の利用状況: 2025年12月5日、2026年5月の利用状況: 2026年8月12日掲載)https://www.golf-ngk.or.jp/news/
  2. 日本ゴルフ場経営者協会「全国ゴルフ場利用者数・ゴルフ場数」月次速報(2025年7月度〜2026年6月度)https://www.golf-ngk.or.jp/riyousyasu/riyousyasu.html (2026年6月度: https://www.golf-ngk.or.jp/news/2026/riyosya/2026.6riyosya.pdf )
  3. 総務省統計局「統計トピックスNo.149 統計からみた我が国の高齢者」(2026年9月20日)https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1490.html
  4. 総務省「地方税制度 ゴルフ場利用税」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_15.html
  5. 総務省「令和9年度 税制改正要望(文部科学省)」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/r09_youbou13_mext.html
  6. 一季出版「スポーツ庁、ゴルフ場利用税の見直し等要望せず」(2022年10月31日)https://www.ikki-web2.com/archives/7914
  7. egolf.jp「70代は現役でも80代で退会増加… ゴルフ場が直面する会員構造と『2025年問題』その後」(2026年6月1日)https://egolf.jp/life/240525/
  8. National Golf Foundation “A New Age in Golf?”(2024年10月10日)https://www.ngf.org/short-game/a-new-age-in-golf/
  9. 総務省「令和5年度 税制改正要望(文部科学省)」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/r05_youbou10_mext.html